のらねことすていぬ
二次創作小説とか書いてます。 元の作者様、出版社とは全く関係ありません。 今のところ二次創作は「道士郎でござる」、「天使な小生意気」中心です。
DATE: 2009/11/04(水)   CATEGORY: 道士郎
逢魔時
道士郎×殿、
江戸時代遊郭パラレル
っていうベタな設定なのでご注意ください。













夕暮れ時は、魔の通る時。

気をつけなければ、魔に囚われてしまう。

気をつけなければ、心が攫われてしまう。







「健助。」


鮮やかな色彩で彩られた障子が音もなく開かれると、少し派手な衣装に白い髪をした少女が立っていた。

「あの男。またお前に会いに来てる。今お母さんと話してるけど、そんな格好してたら不味いんじゃないのかよ。」


彼女は、僕の着物も帯も何もかも取り払った襦袢姿に、チラリと視線を落として言う。
かなり可愛らしい容姿をしているのに、その尖った雰囲気のせいか 一度たりともニコリと笑わないせいか、客の評判はイマイチだ。
それでも馴染みの客が買い続けているらしく、店主である“お母さん”からは大切に扱われている。


「ありがとエリタン。」


にっこりと笑みを作ってお礼を言うと、彼女の白い眉間に皺が寄せられた。
『その名前で呼ぶな』と言外に言っているようだが、実は本人もそう嫌ってはいないのを知っているので、特に気にしていない。
その様子が癪に障ったのか、エリカは長い着物の裾を掴むとドスドスと足音を立てて自室の方へ向かってしまった。
この色町に珍しく、はっきりと感情をあらわにする様子に思わずまた小さく笑いが漏れた。

僕は寝そべっていた布団から起きだし、あちこちに散らばった着物にのろのろと袖を通す。
だが今日は初夏にしてはひどく暑く、重たい着物をわざわざ着る気にもなれず 直ぐに放り出した。
どうせ彼も、そんなことで腹を立てたりしないだろう。
万一腹を立ててこの先 僕に会いに来なくなっても、僕の心労が減るだけだ。
もちろん、店のお母さんは怒るだろうけど。


「・・・・・彼は、何で僕に会いに来るんだろうね」


誰ともなしに呟くと、障子の外に人の動く気配がした。


「健助姉さま、道士郎のだんな様がお越しでありんす。」

「ああ、うん。入ってもらって。」


かずらの声におざなりに返事をすると、明らかに障子の向こうで戸惑っているのが分かる。
ここは超高級遊郭とは言えないが、安い娼館ではないのだ。
いくら馴染みとはいえ、買いに来た客を出迎えもせず 障子を開けもしない遊女は、確かに他には居ないだろう。
ああ、小さい子を苛めるのは良くないな、とぼんやり思っていると、外で小声でいくつか言葉が交わされ、かずらが去り 『失礼致す』との言葉と共に障子がするりと開いた。


「健助殿・・・・・」

「久しぶりだね、道ちゃん。」


だらしない格好で布団に半分寝そべる僕に、彼がその意思の強そうな眉をグッと顰める。
声を掛けても返事をしないところを見ると、どうやら僕の怠惰な姿が気に入らないようだ。
がっしりと背の高い彼が部屋の中に入ってくると、そう狭い部屋でもないはずなのにひどく圧迫感があった。


「今日は早かったね。まだ日暮れ前だよ。」


いつも彼は、夜が更けてから、闇に紛れるようにして僕のところへ渡ってくる。
そして、それを僕も当たり前だと思っていた。
彼は誇り高き武士なのだ。
おおっぴらに遊郭に通う 色惚けた なまくら侍たちとはわけが違う。

だが、僕の言葉に彼はス、と僕から視線をそらした。
その仕草に、彼がそのことについて触れられたくないのだと悟り、僕は口を閉ざした。
元々特に大した意味はない質問だったのだ。


「まぁ、今日は夕日が綺麗でいいよね。」


僕は詰まらない事を口の中でゴチャゴチャ言って、少し道士郎に近づいた。
立ち上がらずに膝で床をすって歩き、道士郎が手を伸ばせば届くギリギリのところで僕は正座で座る。
すると ようやく、道士郎はその切れ長の目を僕に向けてきた。


「健助殿・・・・・。お変わりないようで。」


彼の声は相変わらず深く、低く。
耳を通して、僕の心の奥を刺激する。
その切れ長の目に僕が映っているというだけで、僕はどうしようもない興奮を覚える。
彼の目に映るのが、汚らしい淫売だと分かっていても、湧き上がる気持ちをどうにも抑えきれない。


「そう、見える?」


可愛げのない、意地の悪い返事だと自分でも思う。
嫌味など言いたくないのだけれど、口が勝手に動いてしまう。

・・・・・だって、僕は、変わってしまったから。


僕の言葉に、彼は綺麗な形をした眉をピクリと動かした。






2 へ



つづきを表示
CO*0 ] page top
Copyright © のらねことすていぬ. all rights reserved. ページの先頭へ