健康日本21 3
俺はどっちかって言うと恋愛下手なんだと思う。
俺の顔は少し女顔だが、悪いわけじゃないから何回か女の子に告られて付き合ったことはある。
でも大体の子が半年もしないうちに、『アナタは私の事を見てくれない』とか
『もうアナタの性格には付いて行けない』とか言って離れていった。
でも別に何回振られても、別に女の子 全てに絶望した訳じゃなかったし。
若いうちの恋愛なんてそんなもんだと思ってた。
俺的に、愛情っていうのはそんな弱肉強食っつーか、自分を見てくれ!っていうんじゃなくて、相手がちっとも自分のことを好きじゃなくても 笑って幸せならそれでいい。
っていうゆったりとした優しさに包まれるもんだと思ってたんだ。
でも必要とされているということが嬉しくて、付き合って、またすぐ振られて。正直、ちょっと飽きていた。
中学の時仲良かった奴が「すっげー気持ちいい」って言ってた セックスも、まぁこんなもんか、って程度だったし。
俺も誰かに愛されてみたいなぁ、っていう、無駄な希望はあったけど。
目が覚めたら、天国にしては質素な天井。
あー天上の天井?
なんてつまんない事考えてたら。
天使様にしては体格の良すぎる男が傍に立っていることに気が付いた。
「気ぃ付いたか?」
ガタイがいいだけじゃなくてヒゲまで生えてるよこの天使様。
仮にも衰弱して寝てる人の隣で喫煙はやめようよ天使様。
つーか今まで気配してなかったよね。そこはさすが天使様。
「体、平気か?喋れるのか?名前は?つーか何してたんだよお前、あんなところで。」
質問攻めですか天使様。
それから名前を聞くときは自分から、が人間界ではマナーなんですよ。
それから喉が痛くて声がでないんですが。
神の力でなんとかなりませんか。
口を何度かパクパクさせると天使(仮)も理解したのか
声が出ないなら先に言え、とか無茶を言いながら
水の入ったコップと水差しを持ってきた。
「それで、お前はあんな所で何をしていたんだ?」
俺がかなりの量の水を飲み、だいぶ落ち着いたのを見計らってこんどはあっちが俺を見つけた経緯を話始めた。それからちゃんと自己紹介もしてきた。
やっぱり天使なんかじゃなかったみたいで、筋骨隆々、というわけじゃないが全く隙の無い体と雰囲気をもった背の高い男はウズと名乗り、喫煙のことも軽く謝ってきた。
ただでさえ衰弱していた俺が丸二日目を覚まさなかったため すこし焦っていたそうだ。
なんだか申し訳なくて、それ逆効果じゃないっすか?
とか突っ込むのも忘れてしまった。
彼の歳は俺より上、30前後っぽい。
伸びかけの黒髪。
彫りが深くて男くさい 女好きのしそうな顔に、190は軽く超えるであろう体。
日焼けした肌が鈍く光っている。
でもその年齢にしちゃ落ち着きすぎな感じもする。
あ、もしかして悟りとか開いたりしました?
無駄なことを頭の中でつらつらと考えていたら、ウズさんがその鋭い瞳をするりと此方に向けて口を開いた。
「言っておくが、俺は宗教の類は一切信じないからな。」
それだけ言うと、タバコを靴の裏でもみ消して、ゆっくりと扉の外へ消えていってしまった。
その場に残るのは、嗅いでいるだけで鼻の奥が苦くなるような タバコの匂いだけ。
・・・俺、もしかしてとんでもない人に助けられた?
話をしてみるとウズはぶっきらぼうだが 見た目ほど悪い人でも怖い人でもないと分かった。
いい加減そうな様を装っているが、一本筋が通っていて自分の正義に忠実な人。
最初は俺が少しでも不審な動きをしたら即行殺しそうな雰囲気だったんだけど、
だいぶ信用してくれたのか、最初の少しピリッとした空気は無くなった。
でも俺は、この男の言った内容に気を取られて そんなこと気にしてる余裕なんて全くなかったんだ。
「だから、ここはフィラシア皇国で、お前は明らかに異邦人だ。」
はい??
もしかして北●鮮以外にも拉致とかする国ってあったんですか?
しかもこの時代に皇国っすか?
「悪いが俺はニホンなんて国は聞いたこともないし、・・・お前の言う事柄のいくつかも理解できん。」
・・・この人山篭りのしすぎで少しおかしくなった?
最近のニュースどころか、車や電車すら分からない。
ウズさんの髪は黒いが、それはウズさんも外国からきたから。
しかしウズさんの国もニホンなんて名じゃないし、目まで黒い人間は滅多にいない。
あ、そういえばウズさんの目、すごくうすい茶色だ。
目つき悪くて怖いから、今まで直視してなくって分かりませんでしたよ。
でも、ありえねぇ。
こん位の目の色の人は日本にもいるはずだし、きっと。
あ、そんなヒゲ面のくせにじつはハーフとか?
びっくりしすぎで逆に色々疑い始めた俺に気付いたのか、
ウズさんはいきなり俺の近くにあったカーテンを引いた。
急な強い日射しが目に痛い。
気遣いって言葉知ってますかー?とか思ったけど、すぐ理解した。
ああ、百聞は一見にしかずってことですか。
それで あの、もう一回倒れていいですか?
窓から見えたのは、すんげー綺麗な山々と、でっかい城を守るように飛び回る・・・・・龍。
・・・たしかに 車、いらないっすね。
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