のらねことすていぬ
二次創作小説とか書いてます。 元の作者様、出版社とは全く関係ありません。 今のところ二次創作は「道士郎でござる」、「天使な小生意気」中心です。
絡めた指




本当に、細い糸でつながっている様な気分だった。

旅の仲間、というだけの関係。

それだけのものの筈なのに、欲深い僕はそれ以上を望んでしまった。

いつ切れても、おかしくはない。

いつ、あなたが手の届かないところへ行ってしまっても、おかしくはない。

・・・もちろん、それを言うならば、彼は最初から手の届かない人ではあったのだけれども。

それでも、ほんの少しの間でも、あなたが僕のところまで降りてきてくれたから。

その優しく力強い指先で、僕を拾い上げてくれたから。

だから、少しの間だけ、強くなれたような気がする。





「・・・フロド、」



夜の闇に紛れて、彼が呻くようにささやく。

静かな僕の自室でなければ、聞き落としてしまったかもしれない程の小さな声で。

滅多に聞かない、少し弱ったような沈んだ声に、そんな声は聞かせないでくれ、と思う。

旅の仲間のリーダーだった彼は、これから更に大きなものを背負う立場になるのだ。

こんなところで、僕と共に立ち止まっている場合ではない。


「フロド。」


彼はもう一度低くささやくと、僕の正面にひざを着いて、ゆっくりと僕の指に彼の指を絡ませた。

思わず体がピクリと動いてしまうけれど、到底振り払う気にはなれなかった。

彼の指は、見た目どうり少し硬くて乾いていて、それでいて暖かかった。

旅をしている間は よく触れたはずなのに、随分と懐かしい感触のような気がした。




体の中で一番敏感なのは、指先だと前に聞いた事がある。

確かに僕の指先は、彼の手に残る傷も、皺も、細胞の一つ一つもはっきりと僕に伝えてくる。

まるでそれらを必死にのみ込んで、一生忘れないようにしているかのように。

触れた指先から、僕が溶けて彼の中に消えてなくなってしまえばいい、というように。


「本当に、シャイアに帰るのか。」


アラゴルンの低い声が、また耳元を掠める。

いつかは、帰らなければいけない。

人間ばかりのこの国に、自分達ホビットが残っていても、お互いに良いことはないのだ。

アラゴルンもそれは分かっているのか、尋ねる、というよりも あらかじめ決められている事をもう一度確認するように呟いた。

人間の王となる彼の行く先をこばむつもりはない。

それは、僕にとっても何よりもの願いなのだから。

喉が張り付いたように出てこない声に、かろうじてコクリと首を縦に振る。

すると彼の指先にクッと力が入り、僕の指先を締め付けた。

力強い彼の指に捕まり、僕の指先は少し痛んだ。

でもその力強さが愛しくて、僕も無言で指に力を込める。

まるで 離れたくない、と言うかのように、僕たちは ただひたすら絡めた指先を見つめていた。







もう、あなたの事を諦める覚悟はとっくにできている。

だから、せめてもう少しの間だけは絡めた指を解かないでいて欲しいと願う。

絡めたものは、いつかは解かなければいけないのは分かっている。

それを知っていて、あえてそれを欲したのは、自分なのだから。


絡めた指先の、強さと脆さが、僕たちの関係を表しているような気がした。

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